2009年1月31日土曜日

私のデビューは!(その3)

インターフォンを押すとピンポンと鳴ったか、ブーと鳴ったか、今ではハッキリとは覚えていませんが呼び鈴が鳴りました。

そして「はーい」という声が中から聞こえてドアーがカチャッと開きました。
ドアーを開けたのは四十代ぐらいの男性。笑顔が素晴らしく、その人の顔を見て私たちは少し安心をしました。

中に通されると広いワンフロアで窓も大きく明るく清潔感がある部屋でした。そしてパソコンの載った机が、窓や壁に向けてズラリと十台ぐらい列べてありました。

どうやら他に人はなく私たちとその四十代ぐらいの男性だけです。ちょっと落ち着かない空気感です。

入り口の近くにはカウンターがあり、レジやパソコンの小物がならべてあるようでした。
カウンターの後ろの壁には大きな料金表が貼ってありました。その男性は料金表を使って私たちに説明を始めました。

「ここはパソコンをお貸しするお店です。この店内でご利用される場合は1時間いくらでご利用料金を頂きます。また、パソコンを持ち帰られて利用されたい方は日単位でご利用料金をいただきます。どちらもパソコンの機種により金額は違います。どうですか?ご利用になられませんか」

料金表を見ると1時間あたり500円前後でした。今ならインターネットカフェと同じシステムなので料金が高いか安いか判断がつくでしょうが、これは昔の話です。この料金を判断できる材料は私たちにはありません。

私たちは少し困りました。それを察して四十代の男性は「どんなパソコンがあるのかご説明します」と言い、パソコンが置いてあるところまで私たちを案内しました。

「これが富士通のFM-8。画面も高解像度対応。その向こうはNECのPC-8001。その隣はシャープのMZ-80B。そしてタンディ。見たことありますか?あと向こうが日立のベーシックマスタ。東芝のパソピア。コモドールのVIC-20。プリンターも別料金ですがEPSONと精工舎があります」と、とても誇らしげな感じで丁寧に説明をしてくれました。

さて、そのまま帰るか、借りてみるか、さあどうしましょう。ウィンドウショッピングぐらいの気持ちで寄ってみたのですが、他にお客さんがいないと借りるしか選択の余地はなさそう。

正直なところポケットコンピュータのプログラム経験はあるのですが、目の前にならんでいるパソコンは高価なため使ったことがないのです。そんなことも言えずにますます悩んでいると、お店にひとり入ってきました。

「あ、専務。お客さん?」
「社長、お帰りなさい。どうでしたか?」

どうも説明してくれた方が専務さんで、入ってこられた方がこのお店の社長さんみたいです。

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前回の話(その2)

撮影:Canon EOS 10D EF100mmF2.8マクロ

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